| ゲームシステム:[グランクレスト]
2015/01/27(Tue) 16:37:33 編集(投稿者)
――――――大陸歴201X年 アトラタン大陸 辺境のとある小さな村落 そこではアビス界の投影体が領主や兵士を籠絡し、遥か昔に封印された強大な投影体の復活をもくろんでいた。 その窮地に彗星の如く現れたのは君主でも魔法士でも邪紋使いでもない唯の冒険者だった。 彼の者の名はウィス。立ち寄ったセヴァン村の村娘に頼まれては、かつて投影体を封印した英雄セヴァンの祠にて勇者と認められては聖印を与えられ、仲間を率い、民を纏め、操られた兵士達を混沌から解放し、遂には妖女サファイアと共に屈強な投影体リリスを退けた。 共に戦った兵たちはこう証言している。彼の言葉は心に重く、しかし力強く響き、聞けば聞くほど勇気が奮い立つのだと。 正気を取り戻した領主は、勇者ウィスに新たな領主になってくれと請願する。しかし勇者は説く。
「お前のこの土地への思いはそんなものか?」 「それに領主として相応しくないというなら、相応しいよう、自分に自信が持てるよう、成長すればいい」 「一人では何もできないさ 俺みたいに護るしか脳が無いような奴もいる」
領主レンミットは晩年こう語っている。 「彼の言葉があったからこそ、自分自身に誇りを持ち、友の大切さを思い出すことができた」と
勇者ウィスを支えたアルケミストのラティアは、その土地に留まり、領主レンミットの契約魔法士となり、痩せこけた土地を豊饒の大地へと変えていった。 彼女の垂らす一滴の魔法薬は大地に力を蘇らせ、草木は活力を取り戻し、使い物にならなくなった農具は業物の如き切れ味を与えた。 やがてレンミット領は未曽有の繁栄を迎え、商業も自ら行ったラティアは大金を得た。 しかし、契約が満了となる度に村人達から懇願され、中々エーラムへ帰る事が出来なかったという―――
勇者ウィスと共に肩を並べて戦った暴竜オブシディアは、その後度々戦場に乱入し、双方を打ち倒していく姿が確認されている。最後に確認できる文献では、その姿は城に匹敵するほど巨大となり、たった一人で千とも万ともつかない投影体を鏖殺し、中には頭を地面に打ち込んで、屈強な傭兵たちさえ悉く震えあがらせたという。 その後の彼女については資料が存在しない。戦いで命を賭したのか、それとも極みに到達し自然律を書き換えたのか、それは推測する他ない。 しかし、その偉業はいつまでも語り継がれていく。この時点で既に自然律となっているのかもしれない。
領主レンミットの親友であり、虎のライカンスロープであるケインは、その後領内の治安維持に全力を尽くし、一切の害獣や盗賊、投影体を寄せ付けなかった。 因縁在る投影体が領内へやってきた時さえ、其の爪は鉄の如き表皮を切り裂き、其の牙は石柱が如き足をへし折り、捻じ伏せた。 一方で、蜂蜜酒の生産にも力を入れ、養蜂技術を高め、契約魔法士であるラティアの助けも借りて、素晴らしい蜂蜜酒を生み出した。 かつて、交わした約束を肴に、二人は生み出した蜂蜜酒を片手に長らく語り合ったという。
勇者ウィスのその後はあまり定かではない。聖印を持ちながらも、風の如く何者にもとらわれぬ冒険者を続けたとされるが、どれ程その力を狙われたかは想像に難くない。 しかし、時折何処かに現れては、弱き者を、虐げられし者を、窮地に陥りし者を救ってきた事が確認されている。
遥か昔、人々の為に己を顧みず投影体と戦った英雄セヴァン。その聖印を受け継ぎし勇者ウィス。セヴァンと同じく流星のように現れては去り行く姿は、まぎれもなく在りし日の英雄セヴァン。その遺志は確かに受け継がれて行き、人々を守る盾となった。 かの領地では今でも歌い継ぐ。英雄セヴァンと勇者ウィスの伝説を。
―――――――――――― とある歴史家の著書『アトラタン西方録』
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